はじめに
水質調査の基準
○おいしい水とは・・・
日本は水に恵まれた国で、水の味も良いと言われていますが、厚生省(現在の厚生労働省)では、水道によるおいしい水の供給を誘導し、おいしい水を飲むための条件を検討するとともに、おいしい水の水質要件等の目安を作成することを目的として、昭和59年6月に「おいしい水研究会」を発足させました。
この「おいしい水研究会」では、昭和60年4月に「水道水のおいしい都市」として全国10万人以上の都市198市の中から22道県32市を発表しました。長野県では松本市が水道水のおいしい都市として選ばれました。
一般においしい水とは、「ミネラル、硬度、炭酸ガス、酸素を適度に備えた冷たい水」であると言われていますが、昭和60年4月に「おいしい水研究会」が示したおいしい水の要件には、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、炭酸ガスなどを適度に含み、有機物や臭気はきわめて少ないことなどがあげられました。
(1)おいしい水の要件
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項 目
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単 位
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基 準
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備 考
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におい
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残留塩素
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mg/L
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0.4以下
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ほとんどの人が塩素の臭いを感じない濃度
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臭気強度
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3以下
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普通の人が臭いを感じない水準
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味
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硬度(カルシウム、マグネシウム等)
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mg/L
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10~100
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味を美味しくする要素(適度に含まれることが必要
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遊離炭酸
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mg/L
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3~30
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味を美味しくする要素(さわやかな味)
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蒸発残留物
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mg/L
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30~200
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味を美味しくする要素(多いと苦味になる)
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過マンガン酸カリウム消費量
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mg/L
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3以下
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有機物の多い水は渋みが出る
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水温(最高)
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℃
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20℃以下
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体温に比べ20~30℃の低い時が最もおいしく感じる
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※おいしい水研究会
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(2)おいしい水の指標
一般にカルシウム、カリウム、ケイ酸が味を良くし、マグネシウム、硫酸イオンが味を悪くするとし、橋本*らは日本全国の水道水の調査結果などから、次ようなおいしい水の指標(O Index)を提案しています。
おいしい水指標O Index = (Ca+K+SiO2)/(Mg+SO42+)≧2.0
*橋本、南:第36回全国水道研究発表会講演集、p.541(1985)
○評価方法
おいしい水の評価はおいしさの目安として「おいしい水の要件」と「おいしい水の指標」に従い、それぞれの要件を点数化し総合的に評価しました。
おいしい水の要件につきましては、要件にある項目のうち硬度、遊離炭酸、蒸発残留物を評価対象にし、それぞれの項目が要件の範囲に入っている場合は加点し、1項目1点とし3項目とも要件に合致している場合は3点としました。
おいしい水の指標につきましては、インデックス値が2未満の時は1点、2以上で2点としました。
この2方式によるそれぞれの点数を加算し、その点数を水滴の数で表し、その結果を「おいしい水総合評価」としました。
尚、水質の評価にあたり細菌類は評価対象にないため、飲用の適否については判定しておりません。
○ヘキサダイヤグラム
ヘキサダイヤグラムは水質の特徴を視覚的に表した6角形の図形です。
陽イオン、陰イオンの濃度(mg/L)を当量濃度(meq/L)に換算し、左側に陽イオン、右側に陰イオンを図のように定められた位置にプロットし、それぞれの点を結びます。
6角形の形の違いは水質の違いを表し、図の大きさは濃度の違いを表します。
日本の地下水(井水)で最も一般的な水質の特徴を表した型がⅠとⅤにあたります。
水質ダイヤグラムの典型
Ⅰ Ca(HCO3)2 型(重炭酸カルシウム型):浅層地下水、河川水など循環性地下水
Ⅱ NaHCO3 型 (重炭酸ナトリウム型):深層地下水など停滞的な環境の地下水
Ⅲ CaSO4 CaCl2型(非重炭酸カルシウム型):温泉、鉱泉など
Ⅳ NaSO4 NaCl型(非重炭酸ナトリウム型):海水、化石塩水、温泉など
Ⅴ 中間領域型:河川水、伏流水など循環性地下水